前回は経営戦略・ガバナンスの面から賃金が上がらない原因を整理しました。
問題点としては株主構成の変化によって短期利益が重視され、将来的な収益源を確保しにくくなっていることがありました。
今回はそれを踏まえて解決の方向性を考えてみたいと思います。
考えた方向性として3つあります。
- 株主への注目
- 国家プロジェクトの推進
- 個人投資の拡大
1. 株主への注目
一つ目にメディアを通じて投資家がどのような判断・要求をしているのか国民がもっと注目する必要があると思います。企業の経営判断に関するニュースは日々目にしますが、企業と株主の関係に関するニュースは、実際に保有比率に変化が生じた時や異常なコンフリクトが生じたときなど機会は限られているように思えます。(私自身を含めて)どのような企業や機関投資家が存在して、どのような分野の株を保有しているのかを知っている人は関連する業界に勤めていないと知らないことが多いと思います。
国民が株主にも強い関心を持ち、株主の構成や彼らの発信・判断・要求がより注目されることで、企業も株主の利益だけを意識するという傾向に変化があるかもしれません。
2. 国家プロジェクトの推進
日本ではNEDOを中心に多くの国家プロジェクトが行われています。
内閣府のHPにも国の方針が載せられています。
企業は当然こうした国の方針を随時チェックし把握した上で様々な意思決定を行っていることでしょう。ただし私のような一般人は自分が関わる分野・興味関心のある分野以外の国家プロジェクトを知る機会は少ないように感じます。5Gや自動運転などのキーワードはよく耳にしますが、国がどのような将来像を描いているのか、どのようなプロセスを計画していてどのようなプレイヤーがいるのかを知っている人は限られています。(公開されていないわけではなく知る機会が少ない)
国家レベルでどのような将来像を描いていて、そこにどうたどり着こうとしているのかをなるべく誰もが知るレベルで周知することで、それだけ長期的な投資の収益性も評価されやすくなり、企業は将来的な利益源を構築しやすくなるのではないでしょうか。
あくまで管見の限りですが、「今」に関する報道ばかりで、体系的で具体的な「将来」に関する報道が少ないのは残念なことです。
3. 個人投資の拡大
これは資産形成の記事でも書こうと思っていたのですが、個人投資の拡大も必要だと思います。
機関投資家などに比べれば個人の投資額など微々たるものですが、前回の記事でご紹介した通り、個人の投資は全体でも15%近くあり、とても無視できるものではありません。一人一人の投資額は微々たるものであっても、個人の投資家も多くいるという事実があるだけでも社会に対する責任を強く意識し、過度な短期利益重視の経営は倦厭する傾向が生まれるかもしれません。また労働者や待遇に関する報道がも個人投資家を通じて株価に影響するとなれば、社員の待遇・労働環境を無視することはできないでしょう。
また個人投資をすることで株高の恩恵を直接享受することができるのも大きいでしょう。
個人投資のデメリットは資産形成の記事で触れたいと思います。
外資の出資規制はできないのか
実は日本を含めた多くの国で外資出資規制が存在します。
特に安全保障・インフラに関わる分野では届け出を要求していたり、議決権割合などに制限を設けているケースが多いです。日本の外資規制については以下のサイトで紹介されています。
ただ多くの分野にわたって外資規制を設けるのは難しいし得策ともいえないでしょう。
資本主義である日本が出資規制を強めれば、東京市場の株式市場としてのプレゼンスは著しく低下することは目に見えていますし、諸外国から報復を食らう可能性もあります。
また実はマクロな視点で外国から投資をしてもらうというのは非常に重要なことです。
国内のリソースだけで著しい経済成長を望むのは難しく、特に少子高齢化が進んでいる日本では不可能に近いでしょう。経済規模が縮小している日本だからこそ海外からリソースを注いでもらうことが重要になる訳です。
以上の理由から外資の出資規制の強化は政策としては相応しくないと思います。
最後に
今回は経営戦略・ガバナンスめんから偏狭ではありますが解決策を考えてみました。
賃金が上がる方法からは少し逸れてしまいましたが、企業が長期的に収益を確保して定期給与を上げることにはつながると思います。
もし時間が許せば更に詳しく情報収集をしたうえでデメリットも含めて追記したいと思います。
次回は教育面から賃金が上がらない理由を考えてみたいと思います。
コメント