どうすれば賃金が上がるのか【教育①】

career 社会

前回は企業の経営戦略・ガバナンス面から賃金を上げる解決策(といえるか分らんけど)を提示しました。

今回は教育面から解決策を提案するにあたり、問題点を深堀したいと思います。

問題点として以前紹介した書籍からは以下のようなものがありました。

  • 能力開発の不足
  • 世代間格差(就職氷河期世代など)

ここで企業がどのように能力開発を行っているのか見てみましょう。
因みにこれから使用するデータは一部を除き厚生労働省の令和元年度「能力開発基本調査」から引用しています。詳しく知りたい方は以下のリンクからアクセスしてください。

令和元年度「能力開発基本調査」の結果を公表します

以下の図は社員のOFF-JT(業務外での能力向上の機会)に費用支出した企業の推移です。
概ね横ばいですが、近年は微増傾向にあるようです。

次に社員の自己啓発(通常業務を離れてスキルや知識を獲得すること)に支出した企業の推移です。
こちらも概ね横ばいですが、近年は微増傾向にあります。

では社員一人当たりの費用に費やしている金額はどうなっているのでしょうか。

OFF-JTに関しては波はあるものの横ばい。自己啓発に関しては近年は減少傾向にあります。
このデータは全ての職種・雇用形態・産業が含まれているのでケースによってかなり差がありますが、マクロな視点では以上のようになっています。企業を責めるつもりはありませんが、3000円でできる自己啓発にはかなり限りがあるはずだというのが率直な感想です。(後に企業側からの視点で擁護するつもりですww)

正社員・非正社員別の能力開発実施状況

以下は正社員・非正社員別の能力開発支援の実施状況です。

正社員・正社員以外共に増加傾向にあることが分かります。ただし両者に35%近い差がある上に、正社員の25%、非正社員の60%の人々が能力開発の機会に恵まれていないことを考えると、増加傾向にあるからと言って満足はできないでしょう。更に非正規雇用の比率が上昇していることを考えると、労働者が思うような能力開発ができていないケースは少なくないことが分かります。

総務省「労働力調査」から引用

企業は能力開発で何を望むのか

続いて企業がどのような意図で能力開発を行っているかを見ていきます。

正社員に絞ると「マネジメント能力・リーダーシップ」「チームワーク・協調性」「職種に特有の実践的スキル」「課題解決スキル」などが並んでいます。これは正社員に対しては将来利益を確実に生み出せるようなスキルを養ってもらいたいという思いが表れています。またチームを率いて貢献するスキルなど昇進が期待されていることが分かります。場合によっては企業を変革することも望まれているでしょう。会社としては正社員には集団を引っ張りながら利益が出せる社員になってほしいとの思いから、能力開発に支出をする訳です。逆に言うと昇進や集団を率いる意思のない社員は正社員である必要はないということです。(高度に専門性を伴うケースは除く)

上のデータを見ると正社員と正社員以外の社員に身に着けてほしいと考えている能力には大きな違いがあることが分かります。特に「マネジメント能力・リーダーシップ」には大きな隔たりがあり、正社員以外の社員は昇進は期待されておらず、賃金カーブが低い理由もうなずけます。

厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(平成29年)より

一方で正社員以外の社員には「チームワーク・協調性」「定型的な業務・事務を効率的にこなすスキル」「職種に特有の実践的スキル」が高いことが分かります。正社員以外の社員についてはとりあえずオペレーションを維持することが望まれており、それ以上の行動は期待されていないという現状があります。

まとめ

長くなりましたが、今回は問題点の深堀を行いました。
分かったこととして

  • 企業が支出するOFF-JT・自己啓発支援費用は概ね横ばいで、近年は微増傾向にある
  • 社員一人当たりの支出費用を見ると自己啓発は減少傾向にある
  • OFF-JTを実施する企業は近年は増加傾向にあるが、特に非正社員を中心に満足に受けることができない社員も少なくない。
  • 正社員には将来会社を引っ張り利益を生み出すことを期待して能力開発を行っている
  • 非正社員には効率的にオペレーションを維持することを期待して能力開発を行っている

一回だけでは深堀しきれなかったので次回も教育面から深堀を続けたいと思います。

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